気付いたら23歳(遠い目
ハロディムへのご感想を拍手から頂きました。
ありがとうございます。
序盤で兄弟トークが出来て嬉しい。
土日には舎弟シャルティエが出る第二話を上げられるようにします。
昨日は鍵を忘れて家に入れませんでした。
早めに帰宅した弟のファインプレーに助けられましたが、全く自分は小学生かと・・・。
ハロルドマンションって略すとハロマンなのかしら。
うちの子は出して頂けるのかしら。
アマツカさんに投げとこう、うん。
というわけで宜しくね。
あ、すみません。私信でした。
街に溢れる慣れないスーツ。
就活生よりも余程馴染んでいると父に言われたが、それは褒めたの?
ありがとうございます。
序盤で兄弟トークが出来て嬉しい。
土日には舎弟シャルティエが出る第二話を上げられるようにします。
昨日は鍵を忘れて家に入れませんでした。
早めに帰宅した弟のファインプレーに助けられましたが、全く自分は小学生かと・・・。
ハロルドマンションって略すとハロマンなのかしら。
うちの子は出して頂けるのかしら。
アマツカさんに投げとこう、うん。
というわけで宜しくね。
あ、すみません。私信でした。
街に溢れる慣れないスーツ。
就活生よりも余程馴染んでいると父に言われたが、それは褒めたの?
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どーしよーもない話を書いてしまいましたね。
いやいや、物語の基本はハッピーエンドですよ。
救いがなくっちゃね。
模擬裁判の稽古が始まりました。
検察官として容疑者を追い詰める役です。
性格が悪いです。とても。苦笑
誤解されそうだなぁ、俺、結構良い奴なんだけど。←
会社法の進みが早くて追いつかない。
勘弁してほしい。
いやいや、物語の基本はハッピーエンドですよ。
救いがなくっちゃね。
模擬裁判の稽古が始まりました。
検察官として容疑者を追い詰める役です。
性格が悪いです。とても。苦笑
誤解されそうだなぁ、俺、結構良い奴なんだけど。←
会社法の進みが早くて追いつかない。
勘弁してほしい。
ちょっと設定を大幅に・・・・
私は何ヶ月かに一度、兄からお使いを頼まれる。
テルシェイ州の片田舎まで小旅行をするというもの。
行先は余程細かい地図を見ないと載っていない。
西海に面した「イケンズ」という小さな漁師町だった。
私の家からは汽車を乗り継いでも少し遠い。
兄は、あまり他人にものを頼む方ではなかった。
それは全てのことを自分でやると言う意味ではない。
あの人は、どちらかと言うと「やらせる」人だから。
リヒャルトさんはあの兄と一緒にいて不自由はないのだろうか。
二、三度会っただけだけれど明るくて楽しい人だった。
あまり迷惑をかけていないと良いのだけれど。
とにかく、これは兄が私に「依頼」してきた珍しい例だった。
多分、これは兄にとって命令してやらせる類のものではないのだろう。
もっと重要で、大切な用事なのだ。
「ご乗車お疲れ様です。」
ホームに降りたのは私だけで、駅員は嬉しそうに笑った。
イケンズに一番最寄りの駅は十分田舎と言って良かった。
北部内乱の戦場や後背地になった地域とは随分違う。
やはり戦争は大きな発展を促すのだなと感じた。
もっとも、私が10年と少し生きてきた中で戦争は一度切りだったけれど。
バスは一日に五本しかない。
これを多いと考えるか、少ないと考えるかは難しいところだった。
1時間バスを待ち、2時間バスに揺られた。
PTSD、シェルショック、戦闘ストレス反応。
兄は多くを語らなかったがどうやら、そういうものだそうだ。
北部内乱は私が学校で習う以上のものだったらしい。
兄は下士官だった。
中学時代に家を飛び出し、陸軍に入った兄。
何も分からない私はただただカッコ良いと思っていた。
彼らは士官学生だった。
高校を出て一年も経っていなかった。
今の私から考えてもそこまで遠い立場ではない。。
多分、壊れてしまう人もいるだろうな。
もっとも、人間がどれくらいで壊れるのか分からないけれど。
イケンズは天上都市建設の喧騒とは無縁の静かな町だった。
バス停の近くで畑を耕していた老人は、私を覚えていた。
それ程に、この町は外から何もやってこない町なのだ。
目的地まではもう少し歩いた。
ささやかな町のささやかな中心部からすら離れた場所だった。
高台から見える海が美しかった。
「いらっしゃい。4か月ぶりかな。」
海を見ていた私に、二階の窓から声が掛った。
柔らかな笑顔だった。裏表無い、透明な笑顔。
無垢な赤ん坊のようで、24歳の彼には似つかわしくなく思えた。
私はいつものように少しだけ恐怖を感じながら応えた。
「お久しぶりです。リトラーさん。」
兄は私に「行って欲しい」としか言わなかった。
だから私は、その言葉の通り、何も考えずに彼らを訪れていた。
彼と親しかった人々の近況を語り、彼らの日常を聞く。
たったそれだけのことだった。
「ウォーラさんから息子さんの写真です。」
「えーっと、いくつになるんだっけ?」
「7歳です。会う度に大きくなるからこれよりもう少し・・・。」
「私から見たら君もだよ。」
彼は私の頭を撫でた。
照れることも、笑うことも出来ない。
彼が優しく良い人だと実感する度に悲しくなる。
この人はこれからどうなって行くのだろう、と。
「あ、起きたのか。」
寝室のドアが開き、彼より一回り長身の男性が出てきた。
長い金髪が開け放たれた窓からの潮風で揺れる。
私は感情の乱れの発露を辛うじて抑えた。
恐ろしいほどに、その人の瞳は虚ろだったのだ。
「ごめん、ちょっと待って。」
席を立った彼は、その人の世話を始めた。
髪を整え、服を替え、体を拭き・・・
その間も絶え間なくリトラーさんは話しかける。
いつも通り、「ああ」と「うう」しか応答はなかったが。
「いつ起きてくるか分からないから。準備が出来なくて。」
申し訳なさそうに笑った彼は、その人と私にコーヒーを出した。
もちろん、その人はカップに手を伸ばしたりはしない。
立ち上る湯気が運んでくる香りに微かな表情の変化を見せただけだった。
「ミクトラン。イクティノス君来たよ。分かるだろ?」
微かな唸りの返答もなかった。
その人、ミクトランさんは私ではなく窓の外の海を見ていた。
分からなくて良い、分からない方が良いことが私には分かっていた。
きっと彼はリトラーさんすら分かっていないのだろう、と。
「お久しぶりです。」
私は、リトラーさんへの礼儀としてあいさつをした。
存在しないコミュニケーションを仮想するのは辛かった。
これを毎日二人きりで繰り返しているリトラーさんが想像できたから。
今、目の前で行われていることの繰り返し。
空想上のコミュニケーションと献身的な看護。
それでも、リトラーさんの目には慈しみと愛があった。
人生経験に圧倒的な不足を感じる僕にも分かる。
どうして彼は、リトラーさんを残して壊れてしまったのだろう。
何度か会ううちに、私はミクトランさんの罪の深さを感じるようになった。
だから、私は凄くお節介になっていった。
「兄は、いえ、多分皆さん、ですけど・・・」
互いの近況報告が一段落ついたところだった。
ミクトランさんに聞こえないのを確認してから僕は口に出した。
勿論、もともと聞こえてはいないのだが本人がいると流石に遠慮をする。
「リトラーさんに戻ってきて欲しいと思っているんじゃないかと・・・」
自分らしくない歯切れの悪い言葉だった。
はっきりと物を言って、この優しい人を傷つけるのが嫌だった。
傷つかないにせよ、この人から冷たい態度を受けるのが嫌だった。
「大丈夫。心配いらないよ。」
予想していた反応とは全く異なった返答。
とても明るく、朗らかで、笑顔、の拒絶。
しかも、それは物凄くはっきりしたものだった。
「私はね、ずっとこうして過ごしたかったんだ。」
「・・・二人で?」
「そう。誰にも、戦争にも、邪魔されないで。」
「・・・・・・・。」
「だから幸せだよ。とても。」
戦争で壊れてしまった彼を、人知れず、大切に大切にして暮らす。
それが幸せなのだとはっきりと言われてしまった。
あぁ、やっぱりそうなんだ、と気付けてしまった。
これは多分だけれど、兄も気付いていたんだ。
それを確認する為に私を寄越したんだ。
「気付いたかな?」
「・・・多分。」
「うん。あまり、まともとは言えない、私も。」
「・・・・・・・。」
「自分で分かってる。だから大丈夫。」
最近夢を見るのだそうだ。
ミクトランさんが天上都市を乗っ取って戦争を起こす夢。
二人は互いに敵同士で、離れ離れになって戦うのだと言う。
「そんな夢から覚めて、隣に彼がいると安心するんだ。」
そしてまた、あの無垢な笑み。
平常な精神の持ち主には出来ない穢れない表情。
彼は泊まっていくかと提案してくれたけれど、丁寧に断った。
正直なところ、私はここに存在しているだけで悲しくて辛かったのだ。
私はもう、殆ど何もしゃべれず彼の言葉に頷くだけだった。
「また、来てくれるかい?」
私が唯一、きちんと返事出来たのは去り際のこの言葉だった。
「はい」と力強く答えると、彼はまた私の頭を撫でてくれた。
私は、私が彼の言う「邪魔」な存在にならない限りここに来ようと思う。
「では、また。」
手を振って彼らの家を後にした。
少し行ってから、振り向く。
椅子で寛ぐミクトランさんに駆け寄るリトラーさんの背中が見えた。
それは少しだけ滲んで見えた。
潮風が目に沁みる。
私は何ヶ月かに一度、兄からお使いを頼まれる。
テルシェイ州の片田舎まで小旅行をするというもの。
行先は余程細かい地図を見ないと載っていない。
西海に面した「イケンズ」という小さな漁師町だった。
私の家からは汽車を乗り継いでも少し遠い。
兄は、あまり他人にものを頼む方ではなかった。
それは全てのことを自分でやると言う意味ではない。
あの人は、どちらかと言うと「やらせる」人だから。
リヒャルトさんはあの兄と一緒にいて不自由はないのだろうか。
二、三度会っただけだけれど明るくて楽しい人だった。
あまり迷惑をかけていないと良いのだけれど。
とにかく、これは兄が私に「依頼」してきた珍しい例だった。
多分、これは兄にとって命令してやらせる類のものではないのだろう。
もっと重要で、大切な用事なのだ。
「ご乗車お疲れ様です。」
ホームに降りたのは私だけで、駅員は嬉しそうに笑った。
イケンズに一番最寄りの駅は十分田舎と言って良かった。
北部内乱の戦場や後背地になった地域とは随分違う。
やはり戦争は大きな発展を促すのだなと感じた。
もっとも、私が10年と少し生きてきた中で戦争は一度切りだったけれど。
バスは一日に五本しかない。
これを多いと考えるか、少ないと考えるかは難しいところだった。
1時間バスを待ち、2時間バスに揺られた。
PTSD、シェルショック、戦闘ストレス反応。
兄は多くを語らなかったがどうやら、そういうものだそうだ。
北部内乱は私が学校で習う以上のものだったらしい。
兄は下士官だった。
中学時代に家を飛び出し、陸軍に入った兄。
何も分からない私はただただカッコ良いと思っていた。
彼らは士官学生だった。
高校を出て一年も経っていなかった。
今の私から考えてもそこまで遠い立場ではない。。
多分、壊れてしまう人もいるだろうな。
もっとも、人間がどれくらいで壊れるのか分からないけれど。
イケンズは天上都市建設の喧騒とは無縁の静かな町だった。
バス停の近くで畑を耕していた老人は、私を覚えていた。
それ程に、この町は外から何もやってこない町なのだ。
目的地まではもう少し歩いた。
ささやかな町のささやかな中心部からすら離れた場所だった。
高台から見える海が美しかった。
「いらっしゃい。4か月ぶりかな。」
海を見ていた私に、二階の窓から声が掛った。
柔らかな笑顔だった。裏表無い、透明な笑顔。
無垢な赤ん坊のようで、24歳の彼には似つかわしくなく思えた。
私はいつものように少しだけ恐怖を感じながら応えた。
「お久しぶりです。リトラーさん。」
兄は私に「行って欲しい」としか言わなかった。
だから私は、その言葉の通り、何も考えずに彼らを訪れていた。
彼と親しかった人々の近況を語り、彼らの日常を聞く。
たったそれだけのことだった。
「ウォーラさんから息子さんの写真です。」
「えーっと、いくつになるんだっけ?」
「7歳です。会う度に大きくなるからこれよりもう少し・・・。」
「私から見たら君もだよ。」
彼は私の頭を撫でた。
照れることも、笑うことも出来ない。
彼が優しく良い人だと実感する度に悲しくなる。
この人はこれからどうなって行くのだろう、と。
「あ、起きたのか。」
寝室のドアが開き、彼より一回り長身の男性が出てきた。
長い金髪が開け放たれた窓からの潮風で揺れる。
私は感情の乱れの発露を辛うじて抑えた。
恐ろしいほどに、その人の瞳は虚ろだったのだ。
「ごめん、ちょっと待って。」
席を立った彼は、その人の世話を始めた。
髪を整え、服を替え、体を拭き・・・
その間も絶え間なくリトラーさんは話しかける。
いつも通り、「ああ」と「うう」しか応答はなかったが。
「いつ起きてくるか分からないから。準備が出来なくて。」
申し訳なさそうに笑った彼は、その人と私にコーヒーを出した。
もちろん、その人はカップに手を伸ばしたりはしない。
立ち上る湯気が運んでくる香りに微かな表情の変化を見せただけだった。
「ミクトラン。イクティノス君来たよ。分かるだろ?」
微かな唸りの返答もなかった。
その人、ミクトランさんは私ではなく窓の外の海を見ていた。
分からなくて良い、分からない方が良いことが私には分かっていた。
きっと彼はリトラーさんすら分かっていないのだろう、と。
「お久しぶりです。」
私は、リトラーさんへの礼儀としてあいさつをした。
存在しないコミュニケーションを仮想するのは辛かった。
これを毎日二人きりで繰り返しているリトラーさんが想像できたから。
今、目の前で行われていることの繰り返し。
空想上のコミュニケーションと献身的な看護。
それでも、リトラーさんの目には慈しみと愛があった。
人生経験に圧倒的な不足を感じる僕にも分かる。
どうして彼は、リトラーさんを残して壊れてしまったのだろう。
何度か会ううちに、私はミクトランさんの罪の深さを感じるようになった。
だから、私は凄くお節介になっていった。
「兄は、いえ、多分皆さん、ですけど・・・」
互いの近況報告が一段落ついたところだった。
ミクトランさんに聞こえないのを確認してから僕は口に出した。
勿論、もともと聞こえてはいないのだが本人がいると流石に遠慮をする。
「リトラーさんに戻ってきて欲しいと思っているんじゃないかと・・・」
自分らしくない歯切れの悪い言葉だった。
はっきりと物を言って、この優しい人を傷つけるのが嫌だった。
傷つかないにせよ、この人から冷たい態度を受けるのが嫌だった。
「大丈夫。心配いらないよ。」
予想していた反応とは全く異なった返答。
とても明るく、朗らかで、笑顔、の拒絶。
しかも、それは物凄くはっきりしたものだった。
「私はね、ずっとこうして過ごしたかったんだ。」
「・・・二人で?」
「そう。誰にも、戦争にも、邪魔されないで。」
「・・・・・・・。」
「だから幸せだよ。とても。」
戦争で壊れてしまった彼を、人知れず、大切に大切にして暮らす。
それが幸せなのだとはっきりと言われてしまった。
あぁ、やっぱりそうなんだ、と気付けてしまった。
これは多分だけれど、兄も気付いていたんだ。
それを確認する為に私を寄越したんだ。
「気付いたかな?」
「・・・多分。」
「うん。あまり、まともとは言えない、私も。」
「・・・・・・・。」
「自分で分かってる。だから大丈夫。」
最近夢を見るのだそうだ。
ミクトランさんが天上都市を乗っ取って戦争を起こす夢。
二人は互いに敵同士で、離れ離れになって戦うのだと言う。
「そんな夢から覚めて、隣に彼がいると安心するんだ。」
そしてまた、あの無垢な笑み。
平常な精神の持ち主には出来ない穢れない表情。
彼は泊まっていくかと提案してくれたけれど、丁寧に断った。
正直なところ、私はここに存在しているだけで悲しくて辛かったのだ。
私はもう、殆ど何もしゃべれず彼の言葉に頷くだけだった。
「また、来てくれるかい?」
私が唯一、きちんと返事出来たのは去り際のこの言葉だった。
「はい」と力強く答えると、彼はまた私の頭を撫でてくれた。
私は、私が彼の言う「邪魔」な存在にならない限りここに来ようと思う。
「では、また。」
手を振って彼らの家を後にした。
少し行ってから、振り向く。
椅子で寛ぐミクトランさんに駆け寄るリトラーさんの背中が見えた。
それは少しだけ滲んで見えた。
潮風が目に沁みる。