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気付いたら23歳(遠い目
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リクエストを頂いたディムハロの枕にと思っていたんですが、どうも上手く続きそうにない上にディムロスの人格を動かし過ぎた感があったので、没になりました。
ちょっとディム←カー気味。

ディムとカーレルの遣り取り。






「貴方は兵站に関して理解がなさすぎますね。」


カーレル・ベルセリオスは秀麗な造形の顔の中心に深々と縦の皺を入れながら、目の前の男を睨んだ。目の下に疲労の色を感じさせる隈が刻まれていることからして、ここ数日余り寝ていないらしい。尤も少尉に任官して以降、彼が取る睡眠時間は同世代の平均をそもそも大きく下回っていたのだが。


「ご迷惑をお掛けしました。」


謝罪の意を示すべく腰を折った男の長い青髪が揺れた。参謀総長としての苦労が募っている様子のカーレルに内心で微かな同情を示したが、その感情は礼則通りの態度には全く表れない。反発の様子を見せない代わりに反省の色もない。


「ただ、まぁ、戦果の方はお見事でした。全く。」
「ありがとうございます。」


溜息混じりの称賛と中身の無い返礼。自分に認められても全く嬉しくないのだろうな、とカーレルは諦めの色を強くしていた。正直言って、同じ空間にいて快適だと感じられなかった。恐らく相手も同じだろう。年回りも近く、前線への派遣参謀として関わりがあった尉官の時代から付き合いがあり、以前はそこそこに親しくもあった。しかし、階級が上がり互いの責務と権限が大きくなりにつれて反りが合わない物を感じてしまっている。

恐らく、後方で計画を立てる者と前線で指揮をする者の立場の違い、それとそもそもの人格の大きな相違が原因だろう。前線指揮官としての有能さは認めざるを得なかったが、出来る事ならば関わり合いになりたくないとも感じている。彼は一緒に仕事をする仲間、ことに後方にいる参謀達の苦労を顧みない。

しかも、こちらが無理をすれば処理し切れるレベルを見極めて苦労を押し付けてくるのだから計画的犯行としか言いようがない。参謀本部が彼らの能力を分析して計画を立てるのが本筋なのに、むしろ参謀本部が彼らに使われているような気持ちになる。使い方が理に適っているだけに益々カーレルは気に入らない。


「下がって頂いて結構です。報告は書面で。貴方とまた顔を合わすのも億劫ですから。」
「もう準備していありますので直ぐに届けさせます。」


自分のやや直接的な物言いに対する反撃か。一瞬そう思ったカーレルは不快感を覚えたが表情には出さなかった。すぐにこの男が自分に対してそれほど高度な感情を抱いてはいないだろうことを思い出したからだ。この寸鉄染みた発言も彼の立場と職業倫理から表れるものにすぎない。

指示を受ける立場にも関わらず、この男は先回りが多い。彼は一分一秒でも早く目の前の問題を解決し、前線の兵士が置かれた状態を少しでも改善することが正しいと信じている。手続き上の細かな部分で規則に反し、後方に混乱を生じさせ、優秀な参謀達の神経を逆撫ですることになっても。「シェルショックで苦しむ兵士は多いのだから参謀もノイローゼになる義務がある」とでもあの野蛮人は思っているのだろう。糊の効いた制服を着た参謀達はそう陰口を叩いていた。


「貴方と仕事をしていると計画を立てる意味を疑いたくなりますね。」
「前線では計画通りにいかないことも含めて計画を立てます。」


この嫌味は無意識のものだろう。この男は残念なことに好人物で、兵からは慕われ、部下の将校からは敬われ、同僚からは頼りにされている。下級将校の頃は上官からの受けも決して悪くはなかった。つまり、このディムロス・ティンバーに面白からぬ思いを抱いているのは自分だけと言う訳だ。彼のような人間を好ましく思えない立場にいるというだけで随分損をしているような気がカーレルはしていた。


「下がって結構です。」
「はい。失礼します。」


これで無能ならどんなに付き合いやすかっただろう。
そう思ってカーレルは再び溜息を吐いた。





 

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