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気付いたら23歳(遠い目
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やはり結婚式の話か。
単純思考ですみません。



「サマラの6月は出かけるのに向かないな。」
「雨の中、悪いわね。」
「次があったら晴れそうな季節にしてくれ。」
「今度は二人で来なさいよ。」

シガーケースから紙巻を一本取り出したものの火が無い。ウェディングドレスにライターを入れるポケットは存在しないのだ。困ったなと壁によりかかって紙コップでコーヒーを飲んでいる彼をちらりと見やる。

「タバコやめろって言われねーのか?」
「別に、旦那もヘビーだし。ほら、さっさと火。」
「灰落として穴開けるなよ・・・。」
「大丈夫、あたしタバコで白衣ダメにしたことないから。」

溜息を吐きつつ、放り投げられるマッチの小箱。ピンク色の、商売女がいそうな飲み屋のマッチだった。彼が自発的に行くとも思えないが、似つかわしくなくて笑えた。

「ホモのくせに女のいる店で飲む訳?」
「仕事の付き合い。」
「それでも奥さん妬くでしょう?」
「うっせえよ、さっさと吸え。」
「まぁまぁ。今、なにやってるんだっけ?シレジア公国?」
「財務省の調査局にいる。」
「あなたのは聞いてないわよ。どうせ中将の副官でしょ。」
「まぁ、実質は・・・。」
「ディムロス中将は?」
「師団長と士官学校の教授やってる。」
「へー、忙しいんだ。」

マッチを擦って、ドレスのフリルを焦がさないように気をつけながら火を点けた。彼はタバコを吸う人ではないけれど、副流煙に関しては寛容で助かる。最近は近くでタバコを吸うだけで健康被害を訴えられる時代だから喫煙者としては肩身が狭い。

「忙しい訳じゃねえよ。軍人が押しかけたら迷惑かと思っただけだ。」
「相変わらず妙な気の使い方する人たちだこと。」
「俺ぐらいしか肩書きが堅気っぽいのがいねーから。」
「新婦が軍医上がりだと外聞悪いかしらね。」
「どうだろうな。」

興味無さそうに曖昧な返事。これは「残念ながらその通り」の意味だとディムロス中将に教わった。

「ノリス大佐。」
「もう大佐じゃねーよ。」
「あたしの中では大佐だから良いのよ。」
「・・・・・・・。」
「あたし、隠すつもりないから。」
「・・・・・そうか。」

彼が少し呆れながら穏やかに笑った。
時計を見ると、そろそろ行く時間だった。部屋を出る前にあれをして、これをして、と頭の中で段取るが、まずタバコを消そうにも灰皿がないことに気づいて、また彼を見やる。さっきの二倍の溜息と共に、僅かにコーヒーが残った紙コップが差し出された。

「次があったら、二人で来てよ。」
「分かってる。」
「じゃ、ちょっと結婚してくるわ。」

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