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気付いたら23歳(遠い目
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それっぽいものを書こうかと。

※※※

今年は比較的南部が温暖だったらしい。
南部の気候はカカオや砂糖の収穫量に影響を与える。
カカオや砂糖の収量が多ければチョコレートの価格が下がる。
チョコレートの価格が下がれば、この時期には沢山出回る。
と、いう訳でそこら中をチョコレートが飛び交う今日この頃。

「憲兵隊長、法務部一同、次は・・・。」

私の知人には義理堅い女性が多いらしく、綺麗な包装が積み重なっている。
そして、一つ一つその贈り主を記録しては仕分けするノリス。
手作りか否か、日持ちするか否か、消化順まできちんと決めてくれる。
こういう妙な所で有能さを発揮するから困った奴だ。

「個数は昨年比1.1倍。2月中には消化出来るな。」
「また毎日チョコレート漬けか・・・。」
「傷ませないように食わなきゃいけないんだろ?」
「んー、うむ。」
「気持ちだけ貰うんでも良いと思うけどな、俺は。」
「食べ物を粗末にする訳にはいかないだろう。」
「なら、頑張れ。」

言うのは簡単だがなかなか手強いんだ、この量になると。
勿論貰えるのは嬉しいし、ありがたいとは思う。
しかし、量が量。

「少し、手伝わないか?」
「贈り主はお前に食べて欲しいと思ってるだろうなぁ。」
「・・・・分かった。」
「よし、じゃ、この辺から行くか。昼飯代わりな。」
「虫歯になりそうだ。」

上品な箱入りの生チョコレートを口に放り込む。
口溶け良く、すっと消えていくような感じは悪くない。
そもそも甘いものは嫌いじゃないから美味しいと思う。
しかし、昼食代わりと言うのは・・・。
隣を見ると集計を終えたノリスがベーグルを齧っている。

「お前は貰ったのか?」
「ま、多少は。お前のついでで。」
「何個?」
「情報部で2個、第一で3個、あとアトワイトがくれた。」
「・・・羨ましい。」
「沢山貰えて良いじゃねーか。」

沢山貰えて良い。が、限度がある。
20個には日頃の感謝を込めた手紙つき。
いかにも高級な感じのものが15個。
早めに食べるように言われたものが7個。
日持ちしますからゆっくりどうぞ、と言われたのが10個。
憂鬱だ。小出しに貰えたら良いのに。

「全部で何個あるんだ?」
「44個。」
「聞かない方が良かった。」
「そう言うなよ。」

からからと笑って2個目のベーグルを片付け、スープを飲む。
今日は赤ビートのスープ、ボルシチのようだ。
普通の昼食が暫く摂れないかと思うと、早くも羨ましい。
ボルシチを飲み干して軽めの昼食を終えた彼が席を立つ。
時計を見ると、もうそろそろ昼休みも終わる時刻だ。

「じゃ、そろそろ仕事戻るわ。」
「ああ。私もすぐ行く。」

少し沈黙。
部屋の外へ出かけたノリスが戻る。
小さなチェック柄の包みが飛んできた。
受け止めて、小さな茶色い箱を彼に手渡す。
お互い無言で、私は彼の顔も見ない。
逃げ出したいような緊張感の中、彼が微かに口を開いた。

「毎年、どうも。」
「こちらこそ。」

バタン、とやや強くドアの閉まる音。
短いながら緊迫した時間が解けて、ホッと一息。
仕事に戻る前に、集計結果を書き換えないと。





総数45、うち本命1。





本命と書いた自分が恥ずかしくて顔から火が出るかと思った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

書いてる私が恥ずかしい。
今年は平穏なバレンタインデーです。
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