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気付いたら23歳(遠い目
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光が丘公園へ夜桜を見に。
結構ちゃんと咲いてて綺麗だった。
花見のお供は日本酒です。

戦後アトワイト妄想。イクティノス視点。
 その日は連合会議関連の仕事で、たまたま南サマラのクイビシェフ市に来ていた。数年前まで小さな農村だったのだが、戦後の分割で南サマラが共和国として独立すると物品流通の要所として急速に発展し、今では共和国第三の都市になっている。農村だった頃に来たことがないから分からないが、以前の面影がないほどに様変わりしたとのことだった。
 帰りの汽車まで随分と時間があり、暇を持て余した私は真新しい石畳の敷かれた目抜き通りを歩いていた。商店が賑やかに並び、レンガ積み綺麗な建物が林立する様には確かに農村の面影は見られない。だが、街を歩いていて感じる人の温かみは何となく良き田舎の風情を残しているようにも思えた。その風情すらも、いずれは消えていくものなのかも知れないが。
 急速に拡大した都市の弊害として、郵便局や病院などの公共的な施設が不足していると言う話を聞いた。これは戦後復興を果たした都市ならばどこでもそうなのだが、新国家の誕生と並行して行われた都市計画の中で資金の不足がこれを招いているそうだ。クイビシェフも例外ではないのだろう。テントを張っただけの簡易診療所が道端の公園に開かれていた。怪我をしたらしい子供や老人が列を作ってテントの前に並んでいる。これはこれで、温かみのある景色なのだが十分な設備のある病院を増やすこも重要だろう、などと思っていた時だった。
  「次の方、どうぞ。」
 そのまま通り過ぎようとしていた足が止まった。ごく短い言葉だったし、当時よりも随分穏やかな声色だったが、間違いなく彼女の声だった。最後に会ったのは終戦後、彼女の除隊を祝して小さな宴席を持った時だったから5年も前になるだろうか。列の隙間から、患者を診察する彼女の様子が微かが窺えたが、30歳になった彼女は軍に籍を置いていた時とは全く異なる、穏やかな雰囲気を漂わせる笑顔の似合う上品な女性になっていた。
 列に並ぶ老人に声をかけて彼女について尋ねたところ、今の彼女はアトワイト=ハサウェイと言う名らしい。農場主の夫、二人の子供と一緒に郊外で暮らしているのだそうだ。老人はニコニコしながら「良い先生です」とサマラの田舎風なイントネーションで彼女のことを話してくれた。
  「お知り合いなんですか?」
  「いえ、古い知人に似ていたものですから。」
 老人に丁寧に礼を言い、私はその場を離れた。軍医としての彼女よりも、あちらが本来の彼女の姿なのだろう。戦争が終わっても昔のままで軍人しか出来ない自分は、これが本来の姿なのかどうなのかも分からないが、本来の姿の彼女と私は、きっと出会わない方が良いのだと思った。
 サマラ州の片田舎の娘が青春を戦場に捧げた気高い決意に敬意を表し、平穏な暮らしを手にしたことへの祝福を胸に、自分の軍靴が石畳を叩く音に耳を傾けた。

・・・・・・・


拍手返信
>アマツカ様
うちのアトワイトは地元に許婚がいますから多分・・・。
軍を抜けた時は全く違う顔になっていて、普通の優しい女医さんになるんじゃないかなぁ。


>ノリスとアトワイトの会話、の方
楽しんで頂けたなら幸いです。
今後もノリスディム+アトワイトの絡みはお気に入りなので今後も増えますよ。
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