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気付いたら23歳(遠い目
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前書き(三話の前に前書き、という斬新なスタイルだね/苦笑)
元々は「例えば大学生」って内容でオリジナル作品を書こうとしたのです。日当たりの良い窓際の席に座る真面目な青年と、彼に興味を持つ二列ほど後ろの人の話。しかし、大学って私はまだ良く分からない空間ですので。(苦笑)かと言って高校は今更な感じもしましたし、予備校は書きにくいしね。とか考えてるうちに窓際の彼がカーレルになって、もう片方はディムロスに。じゃ、士官学校にしちゃえばいいんじゃないの?って感じで進みました。安易だ・・・。きっかけは予備校の現代国語の授業で村上春樹を少し読んで、文章が書きたくなったからなんです。文体は少し村上春樹っぽくしてみようと思ったのですが、なかなか上手く行きませんね。語り手のディムロスは話の中のディムロスと時間的にかなり距離があるんですが、伝わるかなぁ。過去の出来事だけではなく、それを見詰める現代のディムロスの様子を滲ませられたらという挑戦。長くなりましたが、では、本編参りましょう。

都合良くすぐに偶然が起きたりはしなかったが、それを待つ毎日は妙に楽しかったような気がする。朝は今日こそ何かの弾みで話せるだろうかと期待を膨らませ、夕刻にはいつも通り期待が裏切られたのを残念がった。もう私は毎日二番目に教室に来るようになっていた。彼より早く来る事もしようと思えば出来たとは思う。でも、それはしなかった。私はただ、偶然がやってくるのを待っていた、しっかりと身構えて。待ちに待った偶然がやってきたのは半月ほどした頃だった。いつも通りの時間に教室へと廊下を歩いていると、教室の扉の前に彼が立っていた。彼は廊下の掲示板をぼんやり眺めていた。私は何故彼がそんなところにいるのか分からなかったが、その後ろを通り過ぎて扉に手を掛けた。合点が行った。扉には鍵が掛かっていた。

「まだ開いてないみたいですよ。」

ドアノブを捻る音でこちらに気付いたのか、彼はこちらに視線を移していた。思ったより唐突に待っていた偶然が来てしまって、私は内心で狼狽したのだったが、外からは見えないように努力したつもりだった。

「あぁ、なるほど。」

やりとりはそこで切れてしまった。もう少し続きやすい感じに返事をしたら良かったかもしれないと後悔しながら、開かないドアに背中を預けた。あんなに何かきっかけが欲しいと思っていたのに、何も喋りだせなかったのがとても私らしいと思う。彼の視線はもう掲示板に戻っていた。沈黙の中、何処からか入ってくる隙間風の寒々しい音がした。隕石衝突以来の気候変動と天上都市の所為で、当時は五月でも相当に寒かった。
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「はじめまして。」
長机の斜向かいに座り、軽く会釈して微笑した彼は「ベルセリオス」と名乗った。多分、その時に交わした言葉は殆んどなくて私の方は名乗り損ねたぐらいだったけれど、今でも彼の容姿については何故か良く憶えている。ゆで卵を剥いたような肌に大きく丸い瞳が柔らかく光っていて、鮮やかな紅紫の髪が豊かに伸びていたのだった。後姿しか知らない彼に対して、私が一体どんな想像をしていたのかは今となっては記憶にないが、多分、思い描いていた勝手な彼のイメージと大きく隔たっていたから記憶に残ったのだと思う。
彼への興味はその日から一層増した。興味に特に理由があるはずもないけれど、敢えて言うなら彼は一種独特の雰囲気を持っていて、とにかく私は気になったのだ。多分親しくなれるような予感もしたのだろう。しかし、私は昔から人付き合いに積極的な性格ではなかったから、自分から彼に話しかけるようなことは出来なかったし、彼は勿論今まで通り静かに日々を過ごしていた。偶然が一度あったのだから、きっともう一度あるだろう。そう思って私は、次の偶然を彼の後ろ姿を毎朝確認しながら待っていた。

続く

ディムロス視点。
カー君は下宿学生でディムロスは地元在住。

彼はいつも早く来て、日当たりの良い窓際の前の方の席を取っていた。たまに私が早く来た時は、彼が一番で私が二番目だった。選択科目も重なっていたようで、いつからだったか彼の背中を確認する所から私の一日は始まった。
今考えると可笑しな話なのだけれど、彼の存在を認識してから暫く、私は彼の顔を知らなかった。彼は一番早く来て熱心に無味乾燥な講義に耳を傾け、丁寧にノートを纏めたりしてから一番最後に教室を出ていたから、その二列ほど後方でそこそこ真面目に講義を聞き、さっさと教室を後にする私は彼の背中しか見たことがなかった。結局彼の顔を初めて見たのは、実技講義で11式小銃を分解して組立て直す作業を二人一組でやった時だったと思う。作業室に来た順番に番号を振られたから、私は彼と組む事になった。

続く。
建国記念日。
祝・三周年。
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