忍者ブログ
気付いたら23歳(遠い目
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

ノリス×ディムUP
髪を触らせるのって特別な間柄な感じがする。
勿論、ノリ君はディムの髪の手入れの為に色々勉強してます。
そういう子なんです。

雷雨激しい今日この頃、いかがお過ごしですか?
最近流行のゲリラ豪雨の所為で毎日うちの家族はびしょびしょです。
今日も私は15時からお仕事な訳ですが、帰りは雨でしょう。
傘差してても無駄なくらい降ってきますからねー。
もう、やんなっちゃいますよ。あはははは。

さて、話変わって、にわかにMF2がブームな我が家です。
早速、弟はネンドロを殿堂入りさせました。
パッと見では可愛くないけど育てると可愛いらしい。
私はスエゾーとかヘンガーが好みかなぁ。
9月は時間あるし、気合入れて一匹育ててみようかねぇ。

高校時代の同期生の進学振り分けが始まってます。
文三(文系の中でも人文を重視)に入った奴が工学部へ行ったり。
理三(大部分は医学部へ進学)に入った奴が理学部数学科へ行ったり。
サプライズも何件かありますが大体は普通に進むようです。
私も来年の今頃は「法学部の何学科かなぁー」とか言ってることでしょう。



ちょっと魔が差してオリジナルを書いた。
元は友人(駆け出しながらプロの漫画家だ)が描いたイラストから。
なんでも「ぼんやり系真面目少年」だとか。
著作権の関係上お見せ出来ないのが残念だ。
で、その子(広重敦君/名前は勝手に付けた)視点で書いてみた。
序章だけだけど。

人物設定
広重 敦/Atsushi Hiroshige:17歳、B型、172cm
宮下 良祐/Ryousuke Hirata:17歳、O型、173cm


「俺、お前のこと好きなんだ。」

お昼を済ませた後は図書館に行って本を読むのが僕の日課。最近初めて司馬遼太郎を読んだら結構面白い事に気が付いた。歴史物ってあんまり好きじゃなかったんだけど。国盗り物語も読み進んできて斎藤道三がそろそろ国を追われる頃だ。

「へ?」

投げ掛けられた言葉の意味を理解した途端、ページを捲り損ねて本がパタンと音を立てて閉じる。同時に無意識に声が出た。栞を挟めなかったことに一瞬気を取られそうになったけれど、多分優先順位は高くない。今大事なのはさっき聞こえた一言。

「え、あの・・・宮下?」

少し驚いたり混乱したりしつつ、と言うか実際は随分驚いたり混乱したりしているのだけれど、僕はどうもそういうのが表に出てこない方らしくて・・・あ、いや、そういうのは今はどうでも良いんだ。

何食わぬ顔の彼は僕の隣で鼻歌混じりに図面を引いている。文化祭用の看板らしい。彼は所謂「仕事の出来る人間」で、色んな事をそつなく、でも熱意を持ってこなす。人付き合いに積極的な方じゃないけれど一人で居てもクラスで目立つ。

「出来た。」

僕が彼の横顔を見ているうちに彼は図面を完成させて消しゴムのカスを払い始めた。そして彼が腕時計を一瞥すると、僕の目線も文字盤に落ちた。昼休みは残り少なく、5時間目があと5分で始まる。

「5限、遅れるなよ。」

それだけ言って彼は席を立ち、足早に図書館を出て行く。さっきの一言に特に言及もなく、極めて普通。彼ははっきりものを言う人だけれど、その分無駄な事は言わないから掴めない感じがする。今日なんかは特にそうで、どういう訳だか全然分からない。だって、彼、僕のことが好きだって・・・。

彼と僕とは親しい、と皆は思ってるんじゃないかと思う。僕も彼も、大勢の中で喋ったり盛り上げたりするのは得意じゃない。クラスの輪から少し距離を置いた所で静かに見ているくらいが丁度良い。だから、何となく二人で行動することが多かったりする。だからって親しいとは余り思わない。お互い黙ってる方が楽だからあまり喋らないし。

「じゃ、また明日。」

5限もやっぱり彼はいつも通りで、授業が終わると、その彼はいつも通り一言だけ残して教室から駆けて行った。釈然としない。珍しくあんなに驚いたのに、結局何も無し。いや、何もないならそれに越した事はないんだけれど。放課後に僕が図書館に戻って本を開くと、校庭の隅で図面片手に大工作業を仕切っている彼の姿が見えた。何なんだろ。

「・・・・普通過ぎる。」

結局、本は全然読み進まなかった。
PR
・大蔵健吾(ディム)・・・三年、主将、四番で遊撃。・岸田司(カーレル)・・・三年、三番で捕手。
・岸田純(ハロルド)・・・三年、速球派のエースピッチャー。

「明日はオフだから、ゆっくり休め。」

深夜0時、彼の宿舎の部屋のドアをノックした。ミーティングでは既に知らせてあるが、彼とは予定や方針などの確認をすることもあるから習慣として。

「いつもありがとう。」

寝ているかもと思ったが、ちゃんと中から声がして、次に足音がした。きっと、ドアの前まで来ているのだろう。元気がある声には聞こえなかった。

「元気な奴は、ちょっと遊びに行かせる。」
「ええ。気分転換が必要でしょうから。」
「夜のニュースに出てたよ、今日の試合。」
「・・・・・・・・。」
「岸田、大蔵の連打で粘り勝ち、って。」
「そうですか。それは・・・良かった。」

彼の声がまた一段と沈むのが分かった。良かったようには聞こえない。彼と私のヒットで勝利を得たと言うのに。今日の試合、優勝候補の一つと目される高校との試合で苦しい勝利だった。敬遠でプロ注目の四番を封じ、盗塁とバントで疲れが見え始めた大会屈指の右腕を揺さぶり、どうにか二点を挙げた。こちらのヒットは三本だけ、三振11個。相手の打線は12安打しながら1得点に終わった。

「純の奴、今日の試合は相当気に入らなかったらしい。」
「すみません。世話をかけます。」
「打たれたからなぁ。校歌歌わずに帰るかと思ったよ。」

慣れない冗談を言うと中で微かに笑い声がした。彼が敬遠のサインを出した時、純の苛立ちっぷりは尋常じゃなかった。勿論、乗り気でないのは彼も同じだが試合中の彼は決してそんな様子を見せないし、有効だと考えられる作戦を選択しない理由もない。ショートから見ていても、ブーイングに耐えつつ平然と敬遠を選択する彼の態度からは迷いの欠片も感じなかった。こうして彼と二人きりで言葉を交わすまで、こんなに元気がないとは思っていなかった。

「でも、良く投げ切ってくれた。やっぱりエースだよ。」
「そう言って貰えると助かります。」
「好みの作戦かどうかで、態度が変わるのは難点だが。」
「すみません。あれで、なかなかロマンチストなので。」
「そこはお前と同じだな。」
「・・・・・・・・・・・・。」

ロマンチスト、と言う表現は言い得て妙かもしれない。彼らが歓迎出来る試合は力と力の真っ向勝負なのだろう。ただ、残念な事にうちのチームにそんな余裕はない。投手は純一人に頼り切りで、守備もそこまで高い水準にある訳でもない。打線も彼と私の三、四番でどうにか点を取っている。それでも、どうにか掴んだ甲子園。一試合でも多く戦いたいと私も彼も皆も思ったから、どんな形であっても勝つ事を目指した。

純はキャッチャーからサインを受ける立場として不満を態度に示したが、自分の役割を全うした。一方の彼は冷静に戦況を分析し、その理想の野球から離れることを決断をした。データと明晰な頭脳に裏打ちされた強気のリードが信条の彼にとって、これは辛い決断だっただろう。

「良く決めてくれた。」
「・・・お見通しですか。」
「主将だぞ?少しはお前達の事を知っているつもりだ。」
「・・・・・ありがとう。」

さっきまでより元気が出たような声が返ってきた。彼らとは中学時代から一緒にやっている。同じチームではなかったが、監督同士が親しく何度も練習試合をした。県下ベスト8が最高戦績の公立校で再会し、一緒に甲子園へ行く事を夢見て野球部を引っ張ってきた。支え合ってきた私達三人は最も大切な仲間だ。最後の夏、少しでも長く一緒に戦いたいと改めて思う。

その時、彼が「でも」と口を開いた。いつの間にか、いつも通りの意味深な口調に戻っていた。

「少しは、じゃないでしょう?」
「え?」
「あと、お前達なんて都合良く括らない。」
「いや、それは・・・。」
「私の事、少し所じゃなく知っているでしょう?」
「えーと、その・・・。」
「違います?」
「・・・・・・・違いません。」
「ごめんなさいは?」
「・・・ごめんなさい。」

急に元気を出した彼は、私の言葉尻を捕まえて言い包める。「少しは」と言ったのも「お前達」と括ったのも、それは勿論、照れの為なのだが、彼はそれを許してはくれない。

「上がって下さい。」

ドアが開いて彼と顔を合わせた。二人きりで会うのは久しぶりな気がして、何となく彼の顔を見られたことで安心したような気持ちになる。彼も同じ事を思ったのか穏やかな表情になる。勧められるまま部屋に上がって、ベッドに座った。宿舎の狭い部屋だが、彼らしく良く片付いていた。

「コーヒー、止めてないのか?」

机の上の缶を私は見逃さなかった。彼は「見つかってしまいましたか」と苦笑する。カフェイン中毒と言われる位、コーヒーばかり飲んでいる彼だが、以前胃炎を患ってからは悪化を防ぐ為にコーヒーを抑えるようにしている。

「久しぶりに飲んだんですよ。」
「眠れなくなるぞ。」
「眠りたくなかったんですよ。」

彼は私の隣に躊躇無く腰掛けた。私が端に寄っているから辛うじて隙間が空く。狭い部屋の小さなベッドではあるものの人が二人でくっつき合わなければならないほど狭くはないはず。しかし、僅かボール一個分程の間隔を置いて彼は隣に居る。

「なかなか貴方が来なかったから。」

彼は表情無く目の前の壁を見詰めていたが、一瞬こちらを窺った。困った。この空気は何と言うか居辛い。

「分かっている癖に。」

彼が視線を他所に外しながら膨れて見せた。確信を持っていたかは別として、その考えが浮かばなかったと言えば嘘になる。午前0時まで寝ずに私を待っていた彼が焦れてコーヒーを飲み始める様子が頭を過った。

「私は多分、貴方が想像した通りの人間なんです。だから。」
「だから?」
「もっと自惚れて貰わなきゃ困ります。」
「・・・・・・・・・・・。」
「私の悩みなんて、大体は貴方が解決できる物なんですから。」

すっかり彼のペースに引き込まれてしまった私の頭はちゃんと働いてくれない。不意に彼が横に倒れ、私に寄りかかった。彼は瞳だけを動かして私の様子を窺っていた。

「敬遠なんかしたくなかった。ブーイングも辛かった。」
「分かってる。良く耐えてくれた。」
「勝ちたかったから仕方ないけれど、辛かった。」
「・・・そうだな。」
「でも、貴方が褒めてくれたから、もう大丈夫。」
「本当に?」
「単純な人間なんです。こう見えて。」

私が想像した通りの人間だと言うから、きっとこうして欲しいのだろうと想像して彼の頭を優しく撫でた。でも恥ずかしい事には変わりなく、彼の顔は良く見られなかった。「良く分かってる」と彼は笑った。

「今、私が何を考えてると思いますか?」
「抽象的過ぎないか?」
「質問された瞬間、貴方が想像した事が正解ですよ。」
「え・・・・んー。」
「嘘を言ったら怒りますよ。」
「いや、その・・・。」
「早く。」
「その・・・私の事が、好き、とか・・・・・。」
「正解。」

首筋に彼の腕が回る。あ、これは多分、と思った時には想像通り唇が重なる。瞼を下ろすのが遅れて、彼の綺麗な瞳としっかり目が合ってしまった。目を逸らし損なって見詰め合ってしまうと、彼は唇からも私の目からも離れてくれない。

きっと唇が離れたら「次は何を考えているでしょう?」などと詰問される事だろうから、抵抗するのは止めようと思って、彼が望んでいると思う通りに私に寄り掛かる彼の細い身体をきつく抱き締めた。

<了>
むしゃむしゃしてやった後悔はしてない。
旧作品を加筆。
先生×生徒。

「赤三つってのは凄いなぁ。」

返って来た俺のテストを眺めながら、この男は呟く。
授業中、色々と有意義に過ごしていたお陰で俺の答案は悲惨だった。
いや、逆に荒涼として清々しいぐらいだ。
答案用紙から顔を上げた奴は目の前で不貞腐れる俺を見る。
苦笑いと、呆れの表情。

「三年になる気あんの?」

随分と砕けた口調で紫色の煙を吐いた。
この男は、煙草吸いながら生徒と面談する不良教師。
で、俺は不良教師のクラスのダメ学生。
基本的に授業中は睡眠時間。

「良く寝てたらしいじゃん。」
「別にいいだろ。」
「ま、寝る子は育つってな。」

カラカラとこの男は笑い、俺の頭をポンポンと撫でた。
大学出て二年も経っていない、つまり六歳しか違わない。
なのに、この態度。
癪になって手を振り払う。

「カリカリすんなよ、流行のキレる子供か?」
「神経逆撫でしてんの誰だよ。」
「出来てんのは地理だけかぁ。」
「話聞け。」

俺の話なんか聞かず、成績表を見つつ得意げなこの男。
理由は知っている。
何故って、地理を教えてるのがこの男だからだ。

確かに地理のテストだけは良く出来た。
その理由も知ってる。
何故って、地理を教えてるのがこの男だからだ。

「少しは勉強した方が良いぜ?」
「ほっとけ。」

目を合わさないままで呟く。
こいつとこんなに話したのは久々かな。
授業サボって屋上で寝てた時もこんなだった。
案外マメだから問題児の世話を焼くんだ。
不良教師の癖に。

「毎度手掛かる奴だな。」

と言うほど面倒そうじゃないから、構われるのは悪い気がしない。
「最近授業出てるな。熱でもあるのか?」とか。
「寝るのは出席とってからにしとけよ。」とか。
妙に親しげに話しかけられるのは、嫌じゃなかった。
結構良い奴だなって、そう思った。

「進級させて欲しいんじゃねぇの?」
「別に、どっちでも良いし。」

勉強は嫌いだ。
こいつの授業は一字一句逃さず聞いてる癖に。
地理が好きなわけじゃない。
基本的に勉強なんてものは皆嫌いだ。
でも、消去法で行くと地理になる。
それも高校に入ってからだが。

「おーっ、字まで違うな。」

国語と地理の答案とを見比べてはしゃぐ奴。
元々、丁寧に書けば字は上手い方だ。
科目によって書く字の丁寧さが違うのに気付いたのは最近。
でも、今回は自覚的に綺麗な字を書いた。
多分、こうまですれば気が付くと思った。
気が付いて、距離を取ってくれれば諦めもついた。
なのに、この男は一向に変わる気配が無い。
今まで通り、親しげで嫌な顔しつつ俺の世話を焼く。

「まっ、素行も悪くないしなぁ、俺の指導のお蔭で。」
「ちーげよ。」
「進級させてやっても良いんだけど。」

腹立つな。
俺の気持ちを薄々分かっている癖に、全然気にしない。
さっきから二人きりで、俺はこんなにドキドキしてるのに。
そんな気持ちを踏み躙るように、さっさと切り上げようとしている。

「つーわけでさ、先生に言う事ないか?」

不良教師はさっさと俺に「進級させて下さい」と言わせたいらしい。
妙に馴れ馴れしく接してくる癖に、素っ気無い仕事ぶりがムカつく。
もうちょっと面倒臭い生徒になってやる。

「ねーし。」
「お前なぁ。留年させたら俺も面倒なんだぞ。」

この男の都合など知ったことじゃない。
俺にも俺なりの都合があるんだ。
目を合わさないように窓の外を見た。
二月の寒空の向こうに夕日が沈もうとしている。
夕焼けの綺麗な日の翌日は晴れだ、と聞いたことがある。
俺が聞いてたんだから、多分この男の話だったと思う。

「明日休みだし、早く帰りたくないわけ?」

明日は休み。
月曜も休みだから三連休だ。
こいつ、どっか出かけたりするのかな。
・・・・・・女とでも。 

「別に。あんただろ?」
「俺?」
「女とでも出掛けんじゃねーの?」

俺の問いかけに、この男は笑い出す。
何が可笑しかったか知らないが、俺はまた腹が立った。
何だかとても馬鹿にされたような気がして。

「何が可笑しいんだよ。」
「別に。」
「腹立つんだけど。」
「あー、悪い悪い。つーかさ。」
「あん?」
「俺独り身だし。」

なおも可笑しそうに笑う。
ワケ分かんねえよ、アンタ。

「高校生だねぇ。」
「は?」
「恋バナつーの?好きじゃん、お前ら。」
「別に、俺は・・・。」
「違うのか?」
「アンタでも恋愛とかすんのかなって。」
「へー。」
「つーか、アンタの好みってどんななワケ?」

別にこの男の好みになれる訳でもないが。
でも参考ぐらいにはなるかもしれないと言う打算と共に。
何か頭悪い女みたいな事考えてるな、俺。

「絶対好みにうるさいだろ、アンタ。」
「好みねぇ。どうかなぁ。」

好み、と言う言葉に彼はククッと笑いを漏らす。
そして、手を顎に当てて作ったような思案顔になる。
それを見詰めていると、突然彼がこちらを向いた。

「歳下で・・・。」
「ロリコン?」
「あと、少し生意気なぐらいで。」
「へー。」
「健康的で、目が大きくて。」

堰を切ったかのように、この男の口から言葉が溢れ出す。
アバウトな線を予想していた俺は、細かい注文が並んで驚きを隠せない。
そんな俺を尻目に言葉は続く。

「態度が分かり易過ぎるくせに意気地なしで、問題児で、赤点を三つも取って、俺の科目だけ出来る奴とか。」

俺の思考は止まった。
この男は何が言いたいんだ?
さっきから浮かべてるこの笑みは何だ?

「俺に何か言うことない?」

笑みが消え、突然真面目な顔になる。
いつもヘラヘラしているこの男には珍しい。
思わず、胸が高鳴る。
そして、自然に言葉が出てきてしまった。

「・・・・・好き、です。」

俺をじっと見詰めて、この男が黙る。
言ってしまって、俺は心音が頭に響くほど緊張した。
と共に、強烈な後悔に襲われた。
この男は一言も発さない。
どうしよう、顔が熱い。

「明日は暇か?」
「?」
「暇か?」

ワケも分からぬまま、一つ頷く。
どういうつもりなのだろう。

「九時半に駅な。」
「は?」
「援交にならない範囲で奢ってやるから。」

そう言ったかと思うと、この男は席を立つ。
くしゃくしゃっと俺の頭を撫でて、部屋を出て行ってしまった。

「・・・・・・う、わー。」

残された俺。
日はもう沈んでて、辺りは真っ暗だった。
早く帰らなきゃと思うのに、暫く動く事なんか出来なかった。

おわり。
後々「好みを聞く所のリアリティーが・・・」とか自分の作品に文句をつける私です。
ファンタジーとリアリティーのバランスが難しいよね。
当然だけどファンタジー成分はないとつまらないんだ。
でも、リアルさがないと冷めるって言うかさ。説得力、みたいな?
第一作を書くのは劇作家で、加筆修正するのは演出家のような気持ち。
20歳です。
早い早い。


リトカー。普段書くのより甘い気がする。
あー、眠くて頭がほわほわする。

「おめでとうございます。」
「ん?」
「誕生日ですよ。」
「あぁ・・・そういえば。」

渡される紙袋にはリボンが巻かれていた。
中身は細身のスタイリッシュなネクタイ。
ちょっとお洒落過ぎて仕事には使えない感じの。
私にいつしろと言うのだろうか。

「改めて、誕生日おめでとうございます。」
「この歳になって、おめでとうも無いよ。」
「ふふふ、確かに。」

敢えて否定せず、彼は嬉しそうに笑った。
あんなに小さかった子がこんなに大きくなった。
私が歳を取るのも無理もないな。

「えーと、いくつになったんだったかな?」
「何歳でしたかね?」
「いや、本当に忘れてしまってね、覚えているだろう?」
「さぁ?私も忘れました。」

この前、彼が20を過ぎたのだから私も40過ぎの筈。
毎年誰かしらが祝ってくれていたのだが、歳は思い出せない。
それこそ、歳の所為かなと思ってしまう。

「四十・・・・・四?」
「そんなに行ってませんよ。」
「あれ?じゃあ、三?」
「違いますよ。」

ん?その辺りだったような気がするんだけれど。
彼を助けた時に私は確か・・・。
首を捻って記憶を手繰るうち、彼の手が私の首下へ伸びる。

「ん?」
「試着ですよ、折角なので。」

どこで覚えたのか、手馴れた手付きで人のネクタイを締める。
ワンテンポ遅れて照れ始めた自分がまた、恥ずかしかった。
少しお洒落すぎるネクタイはするすると私の首に収まった。
そう、悪くないような気もした。

「とても若く見えますよ。」
「何歳くらい?」
「んー・・・・30歳。」
「それはちょっと。」

無理が無いかな?と苦笑する。
彼の目は色々と曇っているようだ。

「勿論、贔屓目ですよ。」
「なるほど。」
「それと。」
「と?」

続きを促すと、彼は視線を泳がせた。
ワンテンポ早く照れ出して、自棄になってふんわりと寄り掛かってくる。

「・・・・30だったら、恋人でもおかしくないかと思ったので。」

ちょっと、このお洒落過ぎるネクタイをしても良いかな。
なんて思ったりした。
誕生日を祝ってもらえると言うのは、素敵な事です。



眠い上に時間が無い・・・。
明日も朝から晩まで用事があって外出だよー。
おちおち誕生日もしてらんねー。
寒さがまた徐々に厳しくなる9月。寒さに秋雨(雪ではないのが救いか)が拍車を掛ける。寮が遠いカーレルは、雨の日に時たま私の家に寄った。そうなると自然に夕食を共にし、一緒に過ごす時間が増え、お互いに雨がそう嫌でもなくなった。「雨」だとか「テスト勉強」だとか口実が無いと一緒に過ごせないのが可笑しくもあり、口実を探すのが楽しくもあった。

「雨宿りのお礼」と掃除が始まり、もう何年も使わなかった部屋も二人で少しずつ綺麗にした。止まっていたこの家の時間が動き始めたかのように思えた。掃除で汚れたり、雨に濡れたり、と言った時の為に私の部屋の箪笥にはカーレルの着替えが置かれた。じわじわと私の生活に、時に図々しく時に控えめに彼が浸透していくのが嬉しかった。

両親の部屋を掃除する時、私は両親の話をした。雑巾で壁を丁寧に拭きながら、彼は私の話を聞いてくれた。母が病気で亡くなった事、父の上官だったミクトランが助けてくれた事、父が天上軍加わった事、父がトマス=ウォーラだという事。多分誰にも全てを話したことはなかったと思う。初めて話したのがカーレルだった。彼は地上軍の士官学生で、噂に寄れば父親は地上軍の幹部だと言うのに、そんな事は忘れてしまっていた。
話の途中で気付いたものの、今更遅いと思って全て話してしまった。彼が壁を拭く音、私が床を拭く音だけが聞こえる。部屋の空気の重さに耐えかねて、私が口を開いた。

「すまない。」

言わなければ良かった。天上軍の幹部の息子と親しいなんて彼の立場を悪くするだけなのに。いや、知らなくてもいずれは露見すること。なら最初から彼と親しくなんかならなければ良かった?もっと早いうちに言ってしまえば良かった?言おう言おうと思っていたのに、彼との関係を壊すのが嫌で言えずにいた。だったら隠し通せば良かったのに、彼なら受け止めてくれるような気がして、期待をしてしまって言ってしまった。彼の立場を考えれば、とてもそんなことは出来ないのに。

「謝らないで下さい。」
「・・・・・。」
「・・・怒らないでくれますか?」
「え?」
「お父様のことは知っていました。」

驚いて振り返ると、彼が申し訳無さそうにこちらを見詰めていた。

「最初は知らずに貴方と親しくなりました。」
「では、いつ?」
「7月頃、貴方の話を父にした時に。」
「お父上と言う事は・・・。」
「父が地上軍幹部だと言う噂は?」
「・・・ああ。」
「私の父は、メルクリウス=リトラーと言います。」

私はその人を知っていた。父の大切な友人の一人。そして天上王ミクトランの親友。現在の地上軍総司令官。病床の母をミクトランと一緒に何度も見舞いに来てくれた。父がミクトランに従って天上へ行った後は、何度も一人になった私を訪ねてくれた。カーレルに良く似た、とても柔らかい空気を纏った優しい人。

「知っているのに黙っていてごめんなさい。」
「いや、そんな。」
「出来れば、貴方の口から聞きたかったんです。」
「・・・・・・・・・。」
「聞かせて貰えて嬉しかった。」
「・・・そうか。」

彼が笑顔を見せたから、私も自然と笑顔が零れた。

「貴方が元気だと知って、父は喜んでいました。」
「そうか。」
「幸せになってほしい、と。」
「私に?」
「ええ。貴方に。」
「・・・そう思って貰えるのは、ありがたいな。」
「軍人を目指している事については複雑そうでした。」
「そうか。」
「まっ、私も反対されました。」
「はははっ。」
「自分も軍人の癖にね。」
「なぁ、カーレル。」
「なんですか?」
「私は今でも幸せなんだけれどな。」

 

 HOME | 1  2  3  4  5  6  7  8  9  10 
Admin / Write
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
サイトはこちら
忍者ブログ [PR]