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気付いたら23歳(遠い目
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8月。
士官学校に夏休みは無く、そもそも気温が上がらないので存在意義が無い。とは言え7月よりは日も長く気温もあがる。二列前の寒がりな彼にとっては少し暖かいのも嬉しいんじゃないだろうか。そんな彼は、相変わらず日当たりの良い窓際の席に陣取っている。早いもので、こうして彼の背中を眺め始めて4ヶ月が経った。あまり他人と親しく接するのは得意ではなかった私だけれど、意外なほどに彼とは打ち解けられた。

「昨日の実習ですけど。」
「小銃の?」
「そう。随分上達しましたね。」
「いや、まだ改善の余地はあるが・・・。」
「四月の惨状からは想像もつかない向上ですよ。」
「褒めたのか?」
「ええ、頑張ったと思いますよ?」

馬鹿にされたような、褒められたような。でも彼が嬉しそうだったので丸め込まれてしまった。何と言うか、彼には弱いな。彼が楽しそうに目を少し細めるだけで簡単に私は幸せな気持ちにさせられてしまうのだから。
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カーレルは夕食の片付けを手伝ってから、雪の中帰って行った。部屋は余っているから泊まっていくように薦めようとも思ったけれど、その日の私は妙に感傷的だったし、翌日も学校だったから止めておいた。カーレルにあまり気を使わせても悪いし、誤解を与えても――だから、一体どんな誤解なのだ――いけないだろうし。
「また明日」と手を振るカーレルを表で見送ってから家に入ると、一層広く感じた。だいぶ掃除したから綺麗になったが、その分12年前から時間が止まったかのようだった。時間が動いているのを感じさせるのは、12年で高くなった自分の目線。とっくに背は母を追い抜いて、父に並んだんじゃないだろうか。両親の写真は手元に無いから、二人の背がどれくらいだったかは幼い記憶に頼るしかないけれど。

あぁ、一枚だけあったな。

そう思い出して部屋の隅に放られていた通学鞄を開けて、現代戦史の教科書を取り出す。第一章は二度の北部内戦、第二章から天地戦争の記述が始まる。その冒頭のページに私の父の大きな白黒写真が載っていて“トマス=ウォーラ、天上都市奪取及び天地開戦の中心人物として連邦軍少将ミクトランの下で活躍し、以降天上側の重鎮として天地戦争を指揮。”と簡潔な説明がされていた。
私の微かな記憶では、父は妻思いで息子思いな普通の父親だった。どうしてミクトランに味方して天地戦争を起こしたのかは良く分からない。地上側に残った父の同僚達は、大病を患った私の母の治療費をミクトランが肩代わりした恩に報いようとしたのだろうと言っていた。
それが本当なのかも、私には良く分からない。ただ私は、父が起こした戦争を止めたいと思っている。同時に、亡くなった母の墓と息子の私を置いていった父の真意を、直接問いただしたいとも。恨んでいる訳ではない。父が私や母を大切に思っていたことは知っているから。父は私に、天上軍幹部の息子と知られると苦労が多いからと母方の姓を名乗るよう書き残していた。そして12年間、毎月十分な額の仕送りが匿名で送られてくる。

「父さん、友達出来たよ。」

教科書の写真を見つめながら一晩を明かした。

それっぽいものを書こうかと。

※※※

今年は比較的南部が温暖だったらしい。
南部の気候はカカオや砂糖の収穫量に影響を与える。
カカオや砂糖の収量が多ければチョコレートの価格が下がる。
チョコレートの価格が下がれば、この時期には沢山出回る。
と、いう訳でそこら中をチョコレートが飛び交う今日この頃。

「憲兵隊長、法務部一同、次は・・・。」

私の知人には義理堅い女性が多いらしく、綺麗な包装が積み重なっている。
そして、一つ一つその贈り主を記録しては仕分けするノリス。
手作りか否か、日持ちするか否か、消化順まできちんと決めてくれる。
こういう妙な所で有能さを発揮するから困った奴だ。

「個数は昨年比1.1倍。2月中には消化出来るな。」
「また毎日チョコレート漬けか・・・。」
「傷ませないように食わなきゃいけないんだろ?」
「んー、うむ。」
「気持ちだけ貰うんでも良いと思うけどな、俺は。」
「食べ物を粗末にする訳にはいかないだろう。」
「なら、頑張れ。」

言うのは簡単だがなかなか手強いんだ、この量になると。
勿論貰えるのは嬉しいし、ありがたいとは思う。
しかし、量が量。

「少し、手伝わないか?」
「贈り主はお前に食べて欲しいと思ってるだろうなぁ。」
「・・・・分かった。」
「よし、じゃ、この辺から行くか。昼飯代わりな。」
「虫歯になりそうだ。」

上品な箱入りの生チョコレートを口に放り込む。
口溶け良く、すっと消えていくような感じは悪くない。
そもそも甘いものは嫌いじゃないから美味しいと思う。
しかし、昼食代わりと言うのは・・・。
隣を見ると集計を終えたノリスがベーグルを齧っている。

「お前は貰ったのか?」
「ま、多少は。お前のついでで。」
「何個?」
「情報部で2個、第一で3個、あとアトワイトがくれた。」
「・・・羨ましい。」
「沢山貰えて良いじゃねーか。」

沢山貰えて良い。が、限度がある。
20個には日頃の感謝を込めた手紙つき。
いかにも高級な感じのものが15個。
早めに食べるように言われたものが7個。
日持ちしますからゆっくりどうぞ、と言われたのが10個。
憂鬱だ。小出しに貰えたら良いのに。

「全部で何個あるんだ?」
「44個。」
「聞かない方が良かった。」
「そう言うなよ。」

からからと笑って2個目のベーグルを片付け、スープを飲む。
今日は赤ビートのスープ、ボルシチのようだ。
普通の昼食が暫く摂れないかと思うと、早くも羨ましい。
ボルシチを飲み干して軽めの昼食を終えた彼が席を立つ。
時計を見ると、もうそろそろ昼休みも終わる時刻だ。

「じゃ、そろそろ仕事戻るわ。」
「ああ。私もすぐ行く。」

少し沈黙。
部屋の外へ出かけたノリスが戻る。
小さなチェック柄の包みが飛んできた。
受け止めて、小さな茶色い箱を彼に手渡す。
お互い無言で、私は彼の顔も見ない。
逃げ出したいような緊張感の中、彼が微かに口を開いた。

「毎年、どうも。」
「こちらこそ。」

バタン、とやや強くドアの閉まる音。
短いながら緊迫した時間が解けて、ホッと一息。
仕事に戻る前に、集計結果を書き換えないと。





総数45、うち本命1。





本命と書いた自分が恥ずかしくて顔から火が出るかと思った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

書いてる私が恥ずかしい。
今年は平穏なバレンタインデーです。
良くないとは分かってますが・・・。
某所で見て書きたくなった学生モノです。
「例えば士官学生」書いてるけど、あれは時間かかるから。

・・・・・・

最近、授業中に視線を感じる。
教師が生徒に見られていなかったら問題だが、そういう意味でなく。
何と言うか、見つめられてる、ような。

「8行目のthatは関係代名詞ではありません。」

板書の為に生徒に背中を向ける。
大体の生徒は黒板を見るんだろうけれど、一つだけ背中。
最初は意識しすぎかとも思ったんだけれど、どうやらそうでもないらしい。
気にしてるのがバレていないと良いのだけれど。

「これを文構造に注意して訳して下さい。では・・・。」

出席簿を見ると、つい彼の名に目が行く。
そういえば、彼の視線に気付いてから、当ててないな。
避けてるつもりはないのだけれど、何となく。
あんまり当てないのも意識してるようで具合が悪いな。
ちらりと見やると目が合って、彼はにっこり笑う。
止そう、何か癪になった。

「ティンバー。ディムロス=ティンバー。」
「はい。」

分かっていそうな顔をしていたディムロスを指名した。
その場で立って、訳文を読んでもらう。
この子は頭が固いけれど素直で真面目な良い生徒だと思う。
彼もこれくらい分かりやすかったら良いのに。
敢えて避けたことに彼は気付いただろうな。
今、どんな顔をしているか気にならなくもない。
ただ、きっとまた目が合うから。

「正解。thatは直前のideaと同格ですね。」

彼は出来てただろうな、テストの点も毎回良いし。
担任が言うには英語以外も平均して良く出来ているとのこと。
物静かでマイペースながら周りを気遣える、らしい。
文化祭とかは案外燃える方みたいに言われてたな。
・・・リトラー先生に聞きすぎかな、彼のこと。
あの人は人が良いから気付かないだろうけれど、何か怪しまれたら困るし。

「thatは強調構文や関係副詞の場合もあります。注意するように。」

それに、悪気なく本人に言いそうだからな、あの人は。
たまに職員室で彼と話している所を見るし。
その時は大体ニコニコしてるんだ、彼。
私に向けるような意味深な笑顔ではなく、もっと、こう、良い感じの。
ああいう笑顔が私は好きなんだけれどな。
普通に懐いてくれたら良いのに。

時計を見ると授業終了のチャイムまで、あと数分。
予定のところまで進められたし、今日はこれで終わりにしよう。
このクラスの授業は他より疲れる。

「少し早いけれど、今日はここまで。」

教科書を畳んで教室から逃げ出した。
例の視線は教室を出るまで追ってきて、名残惜しそうに私を見送った。
飽くまで私の勝手な意識だけれど、あながち間違いでもない気がする。

ああ、参ったな。
今日も彼のことばかり考えてしまった。

・・・・・・

英語教師はイクティノス。
あんた変態っぽいよっ。(笑)
例の彼はカー君です。
担任のリトラー先生の前では猫被り。
カー君的には、イクティがモヤモヤして自分避けるのは楽しい。
でも、ディムロス可愛がるのにはムカムカしてるんだ、きっと。
複雑だなぁ、若者は。(笑)
←超簡略図
酷い図ですがご勘弁を。やたらと色がついててチカチカする。(笑)
天地開戦を1000年とすると、話は大体600年くらいから始まります。
その前は6つの王国の連合体がこの大陸を支配していました。
6人の王様が合議して色々決める訳です。各王国には貴族がいます。
貴族=大地主=軍人です。一般人は商工業者か農民ですね。
科学技術は中世後期くらいの感じです。この辺は適当で良いのですよ。

600年代。
一部の国で地主や商人の議会により王制が制限されたりします。
税金を取るのに大商人の同意を得たりしなきゃならなくなったりね。
借金の形に商人に土地取られる貴族が出たりもします。
そんなこんなで連合王国同士も上手く行かなくなったりしはじめます。
商人と組んで儲ける派の王様と商人に土地取られた貴族に味方する王様との対立とかね。
結局戦争になってしまったりするんですが、なかなか決着がつかない。
重税に耐え切れなくなった庶民が反乱を起こして王制を廃止してしまったりする。
6つの国の睨み合いが続く中、各国は三種類に分かれます。
1、商人と結託して儲かる王様が貴族蹴落として上手く支配。(絶対王政だね、これ)
2、失政続きの王様を追放して貴族が選挙王制。(弱体化するパターンだな)
3、一部の貴族と庶民が王様を追い出して共和制。(フランス革命っぽい)

700年代。
6つの国は離合集散を繰り返して3カ国に。
王様も貴族もいるけれど議会が強い北西部(イギリスっぽい)・・・工業に強み、先進地域
共和制で有力者が争い政体が不安定な北東部(フランスっぽい)・・・軍事に強み
王様が地主貴族を支配する南部(ドイツっぽい)・・・農業に強み、後進地域
この三カ国が700年代半ばに北西部と南部の王家断絶を機に連邦政府を樹立。
政治は議会を中心に行なうが名目的で各国の有力者による元老院が大きな影響力を持つ。
北西部の工業製品と南部の農作物が取引され、大陸中央部に商業都市群が成立。

800年代。
それなりに平和が続くが経済格差は拡大。
南部には綿や絹織物などの手工業が立地。製鉄など重工業が北西部では発展する。
北東部は取り残され気味で出稼ぎ労働者が増加。

900年代
初頭、北東部出身の出稼ぎ労働者の待遇改善を訴えるデモが発生。
これが発展し、第一次北部反乱が発生し、連邦軍はこれを鎮圧。
北東部は北西部と南部に領土を一部割譲し、政治活動制限など抑圧下に置かれる。
900年代半ばに隕石が衝突し気候が急変、農業生産が低下し社会不安。
空中都市の建造と「ベルクラント」による土壌改良計画が始まる。
莫大な建造費を賄うために増税が強行され、各地の民衆の間で不満が広まる。
900年代後半、北東部独立派により第二次北部反乱が発生。
(作中の北部反乱と呼ばれるのはこれ。リトラー、ミクトラン、クレメンテが活躍。)
強引な鎮圧に対し、北西部や南部でも反連邦勢力が小規模ながら形成される。

1000年、天上都市完成。初代空中都市長官、ミクトラン少将。
同年ミクトラン少将及び指揮下の部隊が天上都市を占領し独立を宣言。(天地戦争開戦)
北西部、北東部の一部の連邦軍部隊はこれに呼応。中央部都市群は中立宣言。
開戦から一年で天上側は戦前の北西部及び北東部を占領。南部へはダイクロフトの空爆。
相変わらず食糧難は続き、反天上ゲリラ勢力が活動。独立派も不穏な動きを見せる。
北西部、北東部の元老院議員の約半数が天上側に帰順し元老院を去る。
北部を失った連邦政府は地上政府と改名し、元老院を中心に徹底抗戦の方針を打ち出す。
一部の元老院議員は農作物の横流しなどで秘密裏に天上側に接近。
南部の軍支部へ資財を投入し私兵化する元老院議員も現れ、地上軍の統率は乱れる。
軍の統制による治安回復と天上への対抗を急ぐリトラーとクレメンテはリトラー派を形成。
若手将校、兵士を中心に支持を集め、天上軍に対して無策な元老院を批判。
元老院は表立った対立姿勢を見せず、リトラー派と協力し対天上戦に当たる事を確認。
リトラーは地上軍総司令となり、元老院の同意の下での地上全軍の指揮権を得る。
元老院はリトラーの失脚と派閥の吸収を図るが、リトラー派は着実に勢力を拡大。
1020年にはリトラー派は5個師団を完全掌握し、ソーディアン計画を発動。
反天上ゲリラや独立派の協力を取り付け、同年末に天上都市へ侵攻、占領。
天地戦争は終結、リトラー派による暫定政府が成立。

長過ぎる。ごめん。反省する。
世界史は好きだけど、ほぼ素人だから変なトコあっても勘弁して。
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